日記181020
「なんや文章の前後にアルファベットの大文字のLをひっくり返して60%サイズにしたようなのがくっついておるな」
「気づかれましたか」
「お前は誰や」
「お前も何もないでしょう、ここのブログに書き込む権限をもっている人間なんて一人しかいないんですから」
「それもそうやな、ということはこれはアレかいな、落語家が掛け合いをあっちゃこっちゃ向きながらひとりで表現するみたいな」
「改行するたびに口調が変わっているとそう見えますね」
「もしかしたら文章ごとに口調を変えたがるおかしな人かもわかりません、とそういうことやな」
「いま『口調』を打つ時に3回くらい打ち直しましたね」
「うわっなんやそのぶっといやつ気持ち悪っ」
『一般的には二重鉤括弧と言われますが』
「二重もなんも線に囲まれた図形やがな、二重ってのは《こういうの》を言うねん」
「今日はなんですか、〈思ってたけど言わなかったことシリーズ〉ですか」
「なんや音楽レビューサイトでレーベル名を囲ってそうなんを出してきたな君は」
と、TSUTAYAに行って漫画とDVDを返したそばからまた「逃げ恥」を借りて読むような1日しか過ごしてないわたしはたいへんな茶番からブログを書き始めるのであった。
「どの立場から物言うてんねん」
「わたしじゃないですよ」
「一人称が一緒やがな」
「一人称が同じ人なんてこの世にごまんといるでしょう」
「そんなん言うたかて文章の上やったら区別がつけへんし」
「書き手に至らぬところがあったようですね」
書き手も何もこのブログを書く権限を持っている人間は一人しかいないという話をつい先ほどしたばかりである。
「そうやったな」
「そうでしたね」
「…いや、もしかしたら何者かにアカウントをハックされているのかもしれません」
「話す順番を入れ替えるなややこしい」
「口調で見分けがつくでしょう」
「ハッキングといえばですね、今アニメもやってるBANANA FISHの原作を読んだわけですけど」
「昨日もその話しとったな」
「あれ1巻が出たのがもう85年なんですよね」
「最初は冷戦の話にしたかったけども途中でソ連が崩壊してえらいことという話が作者あとがきでしてあったな」
「そうなんですけど、当時Win95が出る10年も前なんでGUIなんてあらへんのですわ」
「敬語と関西弁を混ぜるな紛らわしい」
「それでまあ主人公が天才少年なもんですから、コマンドラインに文字をバーっと書いてハッキングするわけですけど、相手サーバに入り込んでこう、打つコマンドが『What is (任意のキーワード)?』っていう、もはやGoogleを通り越して、SiriとかAlexaみたいな」
「もうコンピュータ感がグチャグチャや」
「当時一家に一台どころじゃなかったですからね、仕事じゃないと持ってなかったからまあ事情はわかるんですけど」
事情と情事はウラオモテである。
「わけわからん上にクソつまらんダジャレを挟んでくるなこの地の文は」
「で、ここからが問題なんですけど」
「なんや」
「今やってるアニメ版が、これが現代版にアレンジされておりまして。こう、原作だと事件の発端にベトナム戦争があるんですけども、これもイラク戦争になったりしている」
「いきなりラジオの書き起こしみたいな文体になってきたな」
「で、こうなると気になるのがこの、ハッキング周りのリアリティなんですね。原作で主人公はもう、ありとあらゆるセキュリティをバンバンブチ破る、まあIQが200という超天才児なんですけれども。このアタマの良さであらゆる暗号を解いてしまって、この暗号も原作だと『パス・ワード(ぱす、なかぐろ、わーど) 』なんてよばれておりまして、非常に微笑ましいんですけれども、とにかくこういうアタマの良さでもってもう、ちょっととんでもないところまでハッキングして、銀行口座をいじるわ、秘密の地図を手に入れるわ、ほとんどデウスエクスマキナ的というか、魔法と同じ扱いをされるれべるで『知り得ない情報を無理やり手に入れる装置』になっているわけです」
「まあそうやな」
「で、どうしてもその無理なハッキングというのは現代版アレンジ、アニメではちゃんとスマホを持っていましたけれども、そういう中では無理が出てしまうんではないかと、わたしこう、非常に心配をしていたわけですね。そうすると、今回はちゃんと現代風になっているということなんですね」
「まあ見てへんねんけどな」
「そういうのを言うのってふつうこういう口調の側じゃないんですか」
「そんな気もするな」
「しかしあれですね、無理やり会話形式にしてみましたけど普通に慣れなさ過ぎて筆を進めていても一向に気の利いた話題とその進め方が思いつかないですねこれは」
「ホンマやで、2000字も使ってしょーもない事しか言うてへんで俺ら」
「俺らって言ったってあなたひとりじゃないですか」
「鉤括弧のあたりからもうちょっと徹底的にメタに走ったらよかったんかもわからんな」
〜ジングル(30秒)〜
「はい、字数は2000字を少し回りました。どこもキー局とせず、全国0局ネットでお送りしている」
「まあネットではお送りしてるんやけどな」
お後がよろしいようで。
「待て待て待てなんもオチてへんわ」
「『お後がよろしいようで』ってこう、『後味スッキリ!』みたいな意味じゃないらしいですね」
「落語の前座の人が『後の人の準備ができました』って言ってつかう台詞やからね」
「我々のあとには誰も準備してませんからね」
「我々もなにもこれ書いてるのんはひとりやねんけどな」
「最近『すべらない話』をちびちび見ているので口語っぽいのを書こうとしてるんですけどね」
「まあ難しいな」